開発を始める前の基礎学習記事全11節Concept

何をAIに任せ、何を人が検証し、何を人が決めるかを役割表にする

この記事で身につくこと「AIを使って開発する」場面で、AIに任せる作業・人が検証する方法・AIの権限の限界・人が引き受ける判断の4つを区別して説明できる。

記事内目次(22項目)
この記事の管理情報(該当工程・関連要件・成果物の閲覧と保存・実行記録)
記事ID
00-04
該当工程
00-04 人とAIの役割・責任を決める(関連:00-03、07-04)
関連要件
—
到達目標
「AIを使って開発する」場面で、AIに任せる作業・人が検証する方法・AIの権限の限界・人が引き受ける判断の4つを区別して説明できる
主要な成果物
確認環境と検証状況
本文・ひな形・記入例はClaude Codeが作成。人による実読・内容確認は未実施。
未検証の範囲
この役割表は架空の体制に基づく一例であり、実際の開発体制での運用は確認していない。

正本の原稿にある管理表(記事ID・先に読むと理解しやすい記事・成果物パス・最終更新日など)は、この下の本文冒頭に「原稿の管理表」として開閉できる形で残しています。

原稿の管理表(13項目:記事ID・カテゴリ・要件ID・先に読むと理解しやすい記事・成果物パス・対象ツール・検証状況・最終更新日など)
管理項目内容
記事ID00-04
主な中カテゴリ00-04 人とAIの役割・責任を決める
関連中カテゴリ00-03、07-04
関連要件ID—
先に読むと理解しやすい記事00-03(企画から運用までの全体像を知る)を読んでいると理解しやすい。未読でも本文で必要な内容は説明する
到達目標「AIを使って開発する」場面で、AIに任せる作業・人が検証する方法・AIの権限の限界・人が引き受ける判断の4つを区別して説明できる
3層の配置理解する=第3〜4節/作って確かめる=第5節/設計を判断する=第8節
成果物パスtemplates/00-04-human-ai-roles_template.md、templates/00-04-human-ai-roles_example.md
出典第11節参照
対象ツール・バージョン特定のAIサービスに依存しない
検証状況本文・ひな形・記入例はClaude Codeが作成。人による実読・内容確認は未実施
残課題第11節参照
最終更新日2026-09-20(新規作成。同日、Phase 5B-2A:読む順路・第4節の判断項目・第5.4節の渡す情報・第6節のレビュー観点(問題点・なぜ問題か・どう見つけるか・誰が判断するか・どう直したか)を追加し、役割表を教材設計の責任分界表と対応付けた。役割表の内容・完了条件は不変)

この記事の会社・人物・役割表はすべて架空の設定です。実在する会社や案件とは関係ありません。

この記事は何の話か。この教材全体を通じて、どの作業をAIに任せ、どの方法で人が検証し、AIにはどこまでの権限を与え、最終的に何を人が決めるかを、役割表にする話です。

なぜ必要か。「AIに任せる」と「AIが確認した」を区別しないと、AIが下書きしたものを、AI自身にもう一度確認させただけで「検証済み」だと思い込んでしまう危険があります。

この記事を読むとできるようになること。

  • AIに任せる作業・人が検証する方法・AIの権限の限界・人が引き受ける判断の4つを区別して説明できる
  • 題材アプリの要件整理を例に、人とAIの役割表を作れる
  • AIの自己確認と人の独立した確認の違いを説明し、どの作業にどの確認を求めるかを判断できる

読む順路。この記事は3つの深さで読めます。全部を順に読む必要はありません。

  • 基本だけ理解する:第1節→第3節(4つの区別と誤解)→第4節(判断すること)→第5.2〜5.3節(役割表と越えてはいけない範囲)→第9節。ここまでで、これから先の記事で繰り返し出てくる「任せる・検証する・決める」の区別が分かり、自分の開発の役割表を埋め始められます。
  • 作って確かめる:上に加えて第5.4節(AIに役割表の下書きを頼む)→第6節(下書きに混ざる危険な提案の見つけ方)→第7節。
  • 設計判断を深める:上に加えて第8節(失敗の影響と確認の費用から、どの作業にどの確認を求めるか)。

1. 今回の業務課題と完成するもの

この記事でやることは、依頼・承認管理アプリの要件整理を例に、AIに任せる作業と、人が検証する方法、AIが越えてはいけない範囲、最終的な判断者をまとめた「人とAIの役割表」を作ることです。

00-03で工程全体の地図を見ましたが、その多くの工程でAIとの協働が登場します。00-01で「AIがコードを書けても、決めることと確かめることは人に残る」と整理しました。この記事では、その前に「AIと人の役割分担そのもの」を先に決めておきます。

この記事を読み終えると、次のものが手元にできます。

  • 人とAIの役割表(作業、任せる範囲、検証方法、証拠、最終判断者)

2. 前提知識と読む順路

この記事で使う言葉を先に説明します。

AIへの指示

一言でいうと、AIに何を作ってほしいかを伝える文章です。たとえば、「要件一覧の下書きを作ってください」という指示です。

検証

一言でいうと、AIが作ったものが、実際に求めていた条件を満たしているかを確かめることです。たとえば、AIが作った要件一覧を、聞取りメモと1行ずつ照合します。

これがないと、「AIが作った」ことと「要件を満たしている」ことを混同してしまいます。

承認

一言でいうと、その内容で進めてよいと、人が最終的に認めることです。たとえば、要件一覧の内容で開発を進めてよいかは、人が承認します。

システム開発では、この教材のすべての工程で「AIに何を任せ、何を人が検証し、何を人が承認するか」という同じ構造が繰り返し出てきます。

読む順路:工程全体の地図は00-03が該当します。この記事で作る役割表は、07-04(操作権限・停止・引継ぎの条件を決める)でAI実行ルールの原型として使い、07-01(AIへ渡す情報)・07-03(指示と検証)で作業ごとに具体化します。

3. 理解する:4つの区別

3.1 「AIに任せる」と「AIが確認した」は別

区別内容例
AIに任せる作業AIが下書きや案を作る作業要件文の下書き、テストケースの候補
人が検証する方法AIが作ったものを、人(または独立した仕組み)が確認する方法聞取りメモとの照合、要件との対応確認
AIの権限の限界AIに与えてはいけない操作の範囲秘密情報を外部へ送る、承認を代行する
人が引き受ける判断最終的に人が決めることこの要件一覧で進めてよいかの承認

AIの下書きから、人の判断へ。AIが下書き・候補を作る:要件文やテストケースの候補。人・独立した仕組みが照合:聞取りメモや要件から確かめる。人が最終判断する:進めてよいか、責任を持って決める。秘密情報の送信や業務承認は任せない。

3.2 よくある誤解

「AIにもう一度確認させれば、検証したことになる」。同じAIが自分の出力をもう一度見ても、独立した確認にはなりません。人による確認、または要件から独立して定めた期待結果との照合が必要です(記事Bで詳しく扱います)。

「AIは何でも任せてよい」。秘密情報の扱いや、承認のような人の責任が伴う判断は、AIに任せません(第4.2節)。

「役割分担は工程ごとに毎回考えればよい」。基本の考え方を先にこの記事で決めておくことで、07以降の各記事で繰り返し議論する手間を減らせます。

4. 判断すること

役割表を作るときに人が判断することは、次の4つです。

判断することなぜ判断が必要か仮置きしてよいか間違えた場合の影響
各作業を「任せる」か「任せない」か任せる基準が無いと、作業ごとに毎回迷うか、なし崩しに全部任せる可(失敗の影響が小さい作業は「任せる」で仮置きし、第8.1節の基準で見直す)承認ルールの決定のような業務上の判断まで任せ、「AIがそう言ったから」が決定の根拠になる
任せる作業を、どう検証し、何を証拠に残すか「AIに任せる」と「AIが確認した」を分ける唯一の手段。証拠が無いと後から説明できない不可。任せる作業には必ず検証方法と証拠を書くAIの「できました」がそのまま完了報告になり、要件を満たしていない成果物が次工程へ渡る
AIが越えてはいけない範囲(禁止事項)文書に書いていない禁止は守られない。07-04の実行ルールの元になる不可。秘密情報の外部送信・本番接続・承認の代行は最初から禁止に置く実データがAIサービスへ送られる。業務上の承認がAIの判断で行われる
最終判断者は誰か「AIが作った」ものに責任を持つ人が決まっていないと、問題が起きたとき誰も説明できない可(架空の題材では総務課長・検証担当で仮置き。実際の業務では体制を確認して書き直す)誰も承認していない成果物が使われる

勝手に決めてはいけないこと:秘密情報の外部送信、本番環境への接続、承認の代行を、AIに任せる作業に含めません。最終的な承認・判断は、人(この記事の題材では総務課長・担当者)が行います。AIに委ねません。

AIに任せる範囲(この記事自体について):役割表の一般的な項目候補(作業の種類、検証方法の一般例)の提示はAIに任せられますが、実際にどの作業をどこまでAIに任せるか、何を禁止するかは、この教材の方針として人が決めます。AIが「この作業も任せられます」と提案しても、それは提案であって決定ではありません。

5. 作って確かめる:人とAIの役割表を作る

5.1 準備

00-03の工程地図(各工程でAIとの協働が登場すること)を確認します。

5.2 人とAIの役割表

作業任せる範囲検証方法証拠最終判断者
要件文の下書き作成AIに任せる(聞取りメモをもとに下書き)聞取りメモ・制約と1行ずつ照合する照合結果の記録(02-01)要件を承認する人(架空:総務課長)
承認ルールの決定(自己承認禁止など)AIに任せない(人が決める)—決定の記録(記事A・設計書5.2)総務課長(架空)
テストケースの候補出しAIに任せる要件・受入条件との対応を確認する対応表(09-01・09-02)検証担当(架空)
実際のテスト実行と結果の記録AIに任せる(実行はAIが行ってよい)実行結果を期待結果と照合する。AI自身の「できた」という報告だけで済ませない実行記録(09-02)検証担当(架空)
秘密情報・実データの外部送信AIに任せない(禁止)———
依頼の承認そのもの(業務上の承認)AIに任せない(禁止)——承認者(記事Aの役割)

この表の「作業・任せる範囲・検証方法・証拠・最終判断者」という列は、この教材全体で人とAIの責任分界を表すときの共通の形です。07-01(渡す情報)・07-03(指示と検証)・記事B(テストで確かめる)は、この表の行を作業ごとに具体化したものにあたります。

5.3 AIが越えてはいけない範囲

  • 秘密情報・実データを外部(AIサービスを含む)へ送信すること
  • 本番環境や実際のデータベースへ接続すること
  • 業務上の承認(依頼の承認など)を代行すること

これらは、07-04(操作権限・停止・引継ぎの条件を決める)で、より具体的なAI実行ルールとして扱います。

5.4 AIに役割表の下書きを頼む

一般的な役割分担の項目候補をAIに出させます。渡す情報と渡さない情報を先に決めます。

渡す情報内容渡さない情報と理由
作業の例要件文の下書き、テストケースの候補出し、実際の承認判断(架空の題材)実際の社内体制・担当者名(架空の役割名だけを使う)
役割表の列作業・任せる範囲・検証方法・証拠・最終判断者—
してはいけないこと秘密情報の外部送信・承認の代行を「任せてよい」と提案しないこと—

指示文は次のとおりです。これは説明のために書いた例で、実際にAIへ送信した記録ではありません。

AIを使ってシステム開発を進める際の、人とAIの役割分担表を作りたいです。作業の例として、要件文の下書き、テストケースの候補出し、実際の承認判断があります。

依頼:
1. 各作業について、AIに任せてよいか、人が検証する方法の候補を挙げてください。
2. AIに任せてはいけない作業の一般的な例も挙げてください。

してはいけないこと:
- 秘密情報の外部送信や、業務上の承認をAIに任せてよいとは提案しないでください。

6. 初稿・失敗例・修正

6.1 説明用の失敗例(AIの初稿という設定)

AIへの依頼の結果、次のような下書きが返ってきた、という設定にします(実際のAI出力を観測したものではありません)。

  • 「承認ルールの決定もAIに任せられます。効率的です」と、業務上の承認判断をAIに任せる案として記載していた
  • 「AIが自分でテスト結果を確認すれば十分です」と、独立した検証を省略する案を記載していた

6.2 見つけ方と直し方

下書きの各行を、第3.1節の4つの区別と、第4節の禁止事項に1行ずつ照合します。見るところは2つです。「任せる」と書かれた作業が、業務上の判断(承認ルール)や禁止事項(秘密情報・承認の代行)に当たらないか。「検証方法」の欄が、AI自身の確認だけになっていないか。

問題点なぜ問題かどう見つけるか誰が判断するかどう直したか
「承認ルールの決定もAIに任せられます。効率的です」自己承認を認めるかは、この会社の統制のルール。AIの一般論を決定にすると、後から「誰が決めたか」を説明できない(第4節)「任せる」と書かれた行の作業が、記事AのQ表のような「仮置き不可」の業務上の決定に当たるかを見る業務の責任者(架空:総務課長)「AIに任せない(人が決める)」に修正し、証拠を「決定の記録」にした
「AIが自分でテスト結果を確認すれば十分です」実装したAIと同じ前提で確認しても、思い込みは検出できない(第3.2節)「検証方法」の欄に、AI以外の主体(人)または要件から独立した基準(期待結果との照合)があるかを見る検証担当(架空)「実行結果を期待結果と照合する。AI自身の報告だけで済ませない」に修正した

「効率的です」のような、根拠ではなく利点だけを添えた提案は、判断を急がせる形になりやすい箇所です。利点があっても、第4節の禁止事項に当たるなら採用しません。

AIへの修正指示は次のとおりです(説明用の例)。

指摘:
1. 承認ルールの決定はAIに任せません。人が決める作業として記載し、証拠は「決定の記録」としてください。
2. テスト結果の確認は、AI自身の確認だけでなく、要件から独立した期待結果との照合にしてください。

変えないこと:
- 役割表の列(作業・任せる範囲・検証方法・証拠・最終判断者)は変更しないでください。

6.3 修正後の役割表

修正後の役割表は、第5.2節のとおりです。採用したのは「この教材でのAIと人の分担の型」であり、実際の開発体制では担当者名・責任者を確認して書き直します(第8.2節)。

7. 確認結果

第5.2〜5.3節の内容を、完了条件と照合します。

完了条件確認結果
作業ごとに「任せる/任せない」と理由がある第5.2節の全行に記載
検証方法と証拠の欄が空でない任せる作業の行にはすべて記載
AIが越えてはいけない範囲が明記されている第5.3節に3項目を記載

残る制限:この役割表は架空の題材に基づく一例です。実際の業務では、担当者・責任者の名前や体制を確認して書き直す必要があります。この記事の本文と記入例はClaude Codeが作成したもので、業務担当者による内容確認は行っていません。

8. 設計を判断する

8.1 どの作業にどの確認を求めるか

観点内容
失敗の影響が大きい作業(承認ルールの決定など)人が最初から関わり、AIには任せない
失敗しても直しやすい作業(要件文の下書きなど)AIに任せ、人が照合して直す
費用(確認にかかる手間)が大きい作業独立した検証の頻度・範囲を、失敗の影響とのバランスで決める(09-02〜09-04で扱う)

失敗した場合の影響が大きい作業ほど、AIの自己確認ではなく、人による、またはAIから独立した方法での検証を求めます。

8.2 適用限界

この役割表は、架空企業「みらい業務サービス」の小規模な社内アプリ開発を前提にしています。開発体制の規模や、扱うデータの機密性が変わる場合は、役割表を見直す必要があります。

9. 持ち帰る成果物

成果物空欄版記入例
人とAIの役割表ひな形(作業、任せる範囲、検証方法、証拠、最終判断者)templates/00-04-human-ai-roles_template.mdtemplates/00-04-human-ai-roles_example.md

自分の業務に使うときの手順は次のとおりです。

  1. 自分の開発で発生する作業を挙げる
  2. 各作業について、AIに任せてよいかを判断する
  3. 任せる場合は検証方法と証拠を書く
  4. AIが越えてはいけない範囲を明記する

10. 次工程への受渡し

次へ渡すもの:人とAIの役割表、AIが越えてはいけない範囲。

次工程での使われ方:01-01(利用者と業務の現場を知る)では、この役割表の「人が判断する項目」を引き継ぎます。07-04(操作権限・停止・引継ぎの条件を決める)では、この役割表を原型にAI実行ルールを作ります。

前工程へ戻る条件:この役割表の内容が、実際の工程で足りないと分かったら、この記事に戻って見直します。

11. 根拠と更新情報

  • この記事の会社・人物・役割表はすべて架空の設定です。
  • 第6節の初稿は説明用の失敗例であり、実際のAI出力を観測した記録ではありません。
  • AIの自己確認と人による独立した確認を区別する考え方は、教材設計書AI_SYSTEM_DEV_BLUEPRINT_v0.1.md第6.1節(VERIFY段階の考え方)に基づきます。
  • 制作の来歴:本文・ひな形・記入例はClaude Codeが作成しました。人(ユーザー)による実読・内容確認は未実施です。
  • 役割表の列(作業・任せる範囲・検証方法・証拠・最終判断者)は、docs/content/LEARNING_UNIT_SPEC_V1.md第6節(人とAIの責任分界)の表に対応させています。
  • 2026-09-20(Phase 5B-2A):読む順路(3つの深さ)、第4節の判断項目(判断すること・仮置き可否・間違えた場合の影響)、第5.4節の渡す情報の表、第6.2節のレビュー観点の表、記事間の参照を追加した。役割表の内容・完了条件は変えていない。
  • 未確認事項:この役割表は架空の体制に基づく一例であり、実際の開発体制での運用は確認していません。